フィットネス
「フィットネス」という言葉の意味は、実に幅広く、計り知れないものがあります。体を動かすすべての行為——それが運動であれ、仕事であれ——捉え方を変えればすべてフィットネスと呼べるかもしれません。例えば、屋外で働く建設現場の作業も、身体を駆使しているという点ではフィットネスと見なすこともできます。しかし、現実にはそう簡単に割り切れるものではありません。労働とフィットネスは似て非なるものであり、むしろ対極にある場合さえあります。
そこで私が提案したいのは、「フィットネスをする際に、ただ身体を動かすだけでなく、その動きが何に通じているのかを意識する」という、いわば逆の発想です。これは、作業療法(オキュペーショナル・セラピー)の本来あるべき姿とも言えるでしょう。
私はこの考え方を取り入れ、自分のフィットネスジムでこの5年間、高齢者を中心に指導を続けてきました。対象を若者から高齢者へと変えたのは、年齢を重ねることで見えてくる「動きの質」の重要性に気づいたからです。
人は歩くとき、必ず片足で体を支える瞬間があります。つまり、常にバランスが要求されているのです。バランスが崩れれば、当然、動きも悪くなります。私は単に「片足立ち」させるのではなく、軸足が地面にどのように設置しているかを丁寧に確認しながら指導します。すると、歩行時の「歩幅の左右差」などに明確な変化が見られるようになります。
重心をどう前へ移動させるか。それを理解し、身体で実感することが大切です。日常生活の中でも、重心移動が自然にできるようになると、立ち上がりや歩行が格段に楽になります。その実用性を説明しながら、動きを指導しています。
人が動くとき、どこを、どう動かすのか——これは非常に重要です。例えば階段を上がるとき、右足・左足の使い方ひとつで疲労度や安全性が大きく変わります。私はそのポイントを一つ一つ言語化しながら丁寧に教えています。
年齢を重ねると、体の中心である「コア」が弱くなりがちです。コアが弱いと、姿勢を保つことすら難しくなります。一般的にコアトレーニングというと腹筋運動を思い浮かべますが、床に座って立ち上がるのは高齢者にとっては大きな負担です。
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